実際の出来事を各種架空名称に置き換えて一応時系列で進めて行きます/途中から読む人は内容が判らないと思いますので、出来ればトップページへ移動 して最初からお読み頂くことをお勧め致します。
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研究所と言う名称だが、ラボが本体なのか標本の展示をしている資料室が本体なのか判らない様な施設になるのは、特に問題視する心算はなかった。
一般の人や学校の課外学習として小中高の生徒たちが訪れる事を意図しているのだから、ラボが幅を利かせ過ぎるわけにも行くまい。
小中高の課外授業としては、下源さんが既に県教育委員会等に働きかけて、県内の各学校にアイボウズ云々研究所を利用して貰うと言う話が出来上がり掛けていたと聞いている・・・また他府県教育委員会への働き掛ける話を進める予定だとも聞いたが、私はその件には関わっていない・・・この話しは後にアイボウズ云々研究所が頭巾個人の遊興の場と化してしまった事から御破算になっている。
主に海を主体とした水棲生物について学習してもらう施設を目指していたわけだが、頭巾の希望により、現生生物から哺乳類に至るまでの標本を展示する事になっていた。
勿論展示標本の大部分は海の生物だったが、問題は展示物の中には海岸への漂着ゴミが有り( 1)ゴミの海洋流出問題を取り上げたかったのだろう )が、ペットボトルや使い捨てライター等は街の屑籠から持ってきたのか、海岸から拾って来たのかなど判別が付かない物なのだ・・・そんな物が展示棚の一角を占領して仕舞っている事に対して、頭巾には事ある毎に〝どうしても海洋汚染を示したいのならパネルでも作って吊るしておけばいい〟と言って、やめさせ様としたのだが無駄だった。
また下源さんは展示ゴミの中に、フルネームを書いた子供用サンダルが有る事を咎めて、名前の書いてある様なものを、人目に晒してはいけないと言っていたが、これも聞き入れられなかった・・・特にこの様なものは意図的に捨てたのか、水遊びの際に流されてしまった物なのかは判らないわけで、名前を晒して怪しからんと非難出来ないはずだ。
更に頭巾が使っていたデジタルカメラや、高年式で2)史料価値の低い学習用顕微鏡も展示棚の一角を占領しており、特に中途半端な年式の中古カメラなどまだ現役機種で、そんな物をわざわざ見たい人など居ないのだから、別の物に替える様に言ったのだが「3)私が使っていた物だから価値があるのだ」と言われて、これもまた聞き入れられなかった。
そして展示物の中でも特に私が(他の人も)問題視した物が4点有ったのだが、まずは頭巾によって哺乳類コーナーに展示された〝猫の解剖標本〟について記そう。
頭巾がさも愉快そうに私を肘で突っついて「あれ見て」と言った展示棚には、仔猫から成獣になったばかりと言っていい若い猫が、解剖された状態で標本壜の中から恨めしそうな視線を投げ掛けていたのだ。
私は即座に「その標本は展示しない様に。ここでは水棲生物について学習して貰う事が目的ではないか! 観光客等にも来てもらう目的の場所にそぐわない」と、かなり強く進言したのだが、頭巾は不満そうに膨れっ面をしただけで、猫の標本を下げようとはしなかった・・・勿論他の人達も事ある毎に「あれは拙い。絶対に展示から外した方が良い」と意見していたが頭巾は頑として聞き入れようとはしなかった。
しかし施設にする建物の整備に出入りしていた工務店や電気工等々の業者までもが不快感を示し始めると、漸く頭巾も猫の液浸解剖標本をバックヤードに格納したのだった。
次に問題となったのは、節足動物の標本棚に展示されたゴキブリの標本とムカデをペットボトルに入れて保存した物だった。
私も伏山氏も「人に嫌悪感を催させる様な物は展示すべきじゃない」と頭巾に言ったのだが、これもまた無視された・・・その後、展示物についての会議の時にも展示に反対する意見しか出なかったのだが、ここで頭巾は怒りを爆発させ「見たくない奴は見に来なくていい」と大声を張り上げて怒鳴り散らしたのだ。
全くの慈善事業で、収入は要らないと言うのであれば「見たくない人は来なくていい」で通用するだろうが、ある程度は施設利用料や見学料を貰って研究費の足しにすると言う予定なのに、その点はどうするつもりなのか。
来てみない事には何が展示されているのかは判らないのに、「見たくない人は来なくていい」は通用しない・・・ホームページに〝ゴキブリとムカデが展示してあります〟と注意書きでもする心算なのかと、たたみ掛けたが頭巾は席を蹴って仕舞った。
結局ゴキブリとムカデは撤去されないまま残って仕舞った。
そして4点目だが、展示ケースの中に年賀状が置いてあったのだ・・・その年賀状には希少種とされる生き物の4)写真がプリントされてあったのだが、問題はその写真の下側に差出人の住所氏名も印字されていた事だ。
希少種の写真を来所者に見せたいと思って、この様な物を棚に並べたと言う事は理解出来るのだが、個人の住所や氏名を隠しもせずに人目に晒す行為を咎めて、私はまたしても頭巾に苦言を呈さなければならなかった。
すぐに黒い短冊を作って住所氏名を隠したのだが、頭巾の私物でも有るので短冊は上に載せただけで糊付けは流石に出来無かった・・・しかし此の方法は頭巾に通用しなかった。
頭巾はすぐに、自身には理解出来ない黒短冊を捨ててしまい、元の状態に戻してしまった。
私は流石に後々問題が起こる可能性もあるので「住所氏名の部分を切除する様に」と言ったのだが、奴は「学生時代の大切な先輩なのだ」と理由にもならない事を言って拒否したのだ。
頭巾が毎日の日課で、昼食を摂って来ると言い残して夕方にSNSをしに戻って来るまでの間に、私は〝この際私物で有ろうが何で有ろうが放置できない〟として、年賀状の当該部位を折り曲げて見えない様にしたのだった・・・頭巾が5)癇癪を起す可能性など構っていられなかった。
1) 23章で記した様な行動があるので矛盾しているとしか言えず、これも〝私は海洋汚染を憂えている〟と示
して、自身を良く見せようと考えての事なのだろう。
2) 展示価値の無い顕微鏡が撤去出来ないので、一計を案じて骨董品を年代順に並べ、顕微鏡の発達としての
展示にすると言う方法で切り抜けた。
3) 60章 にも記してあるが頭巾は無駄使いが多く、気が向くまま次々と新機種に買い替えていた様だ。
頭巾は高価格帯の物を買い揃えていたが、それでも現役機種なので展示物としての価値は無い。
4) 研究職に就いている人の中には年賀状にその年の干支ではなく、自身の研究対象としている生物の画像を
プリントする人も一定数いる。
5) 不満そうな表情は見せた物の癇癪は起さず、今回は私の対策を受け入れた様だった。